Photo: Kyohei Hattori /Interview&TEXT Shiho Watanabe(ciiron TOKYO)
ciiron TOKYO
Interview
2024.10.03
INTERVIEW ciiron TOKYO x SPEAKEASY SHOULDER BAG
ciiron TOKYO x SPEAKEASY SHOULDER BAG 左からBlack/Silver
ciiron TOKYOでは、実は長い間お散歩バッグの検討を重ねてきました。お客様からのご要望も多く、「よし、作ろう」と決心したものの、単に “オシャレなだけ“ であったり、“ポケットが多いだけ“ のバッグは作りたくない、という強い思いがありました。試行錯誤を繰り返し、多くのバッグメーカーやデザイナーと話し合いを続けている中で、ある日、知人を通じて出会ったのがSPEAKEASYでした。彼らの作るバッグは、機能美とスタイリッシュさを兼ね備え、ciiron TOKYOがまさに求めていたもの。そして2023年冬、SPEAKEASYを訪問。ついにciiron TOKYOとSPEAKEASYのコラボレーションによって、ブランド初のお散歩バッグが完成しました。
今回プロダクトの企画をご一緒させていただいたのは、日本を代表するバッグブランドにおいて長年にわたり数々のプロジェクトを手掛けてきた SPEAKEASY のデザイナー、桑畑さんと小林さん。1990年代初頭、まだ「コラボレーション」という概念が広く浸透していなかった時代から、様々なブランドや人物との ”別注” プロジェクトに参加。外部からの斬新なアイデアと、熟練した職人たちとの緻密な連携により、常に高い品質と優れた機能性を誇るプロダクトを生み出してきました。
「まずは道具として機能的であること、その上で佇まいが良いということを意識しています」By SPEAKEASY
左から、SPEAKEASY 小林剛さん 桑畑晃さん
外部との “別注”プロジェクトを数多く経験することで蓄積されてきたノウハウ
桑畑:
当時、“コラボレーション”という言葉はまだ無くて、“別注”ですよね。ご縁があってさまざまな形で当時のブランドディレクター個人やブランドから別注のオファーをいただくようになって。個々のニーズに合わせてたくさんの仕事をさせてもらいました。本当に外からのインプットに毎回対応していくことで体力つけたみたいなところがあると思うんですよね。
例えば、当時の先端をいってるようなアウトドアショルダーストラップのシステムっぽいものをつけたいって言われたときに、最初は、そんなの縫えないよ、と思うんです。それを職人さんと何度もやり取りして縫えるようになって、それが今ではにスタンダードに縫えるようになっていたり。
小林:
僕は年代が割と近いデザイナーさんと打ち合わせで同席させてもらって。「もう直接やってみなよ」みたいな感じでご一緒させていただいたブランドからだんだんお仕事が広がっていきました。そこから、その世代のデザイナーさんやブランドと一緒に多くの別注プロジェクトに携わるようになり、自分だけだと出せないアイディアに沢山触れることが出来たと思っています。
デザイナーやブランドのディレクターさんたちは、それぞれ独自のライフスタイルを持っていて、サーフィンをする人や、スノボ、アウトドア好きな人など、様々な背景があります。そんな中で、彼らが「こんなものが欲しい」とざっくりした要望を伝えてくれたときに、こちらから色々と提案をして、喜んでもらえたときにやりがいを感じていました。別注プロジェクトの色々な人との関わりで自然にインプットができて、それを職人さんを含め、どんどんチームに蓄積していっている感じはありました。
今も東京をベースにしつつ、そういうクライアントさんの自由な発想から生まれるアイディアを何か具現化するのに、長年お付き合いのある卓越した技術を持ってる職人さんと綿密に、フィジカルに、例えば素材を参考にするものも触りながら作っていく、っていうのは昔から同じスタイルでやっています。職人さんとのお互いの感覚も、やっぱり多くのプロダクトを作りながら築き上げて来たものが多いので、わかり合っているところも多いと思っています。
ciiron TOKYOが共感する、SPEAKEASYのものづくりの概念
小林:
そもそも、SPEAKEASYという社名は、アメリカの禁酒法時代のモグリの酒場を指していて。人目に付かないようにアルコールを提供していた酒場のカルチャーから引用しました。僕らとしてはそこに “ヒソヒソ話” という意味合いを持たせていて、人同士がヒソヒソ話をしながら良いプロダクトアウトができればという思いが込められています。プロダクトに関わる全ての人が真摯に心を込めたコミュニケーションのもと、プロダクトを生み出すっていうことを常に意識しています。そして、ものづくりで大切にしていることは、まずは 道具として機能的であること。その上で佇まいが良いということを意識しています。
桑畑:
あとは、僕らでしか出来ないオリジナル性みたいなものを大切にしていて。実際に商品を使うことで、「あ。やっぱりこれは他に無いな」と思っていただけるプロダクトを作るということは、プロとして常にどこかで意識しながらやっています。
小林:
職人さんとか材料屋さんもそうですけど、商品に関わった人たちがみんな真摯にコミュニケーションを取って商品に向きあうことで、きっと品質が上がるというのは間違いなくあると思いますよね。
逆に、さっきも言ったようにまずは “道具として機能的である” っていう前提があるので、必要のない無駄な飾りをつけるのは好きではないですね。例えばファーのバックを頼まれても基本的にはSPEAKEASYではやらないです。
珍しい考え方になってしまうかもしれませんが、結局それでどんどん値段が上がってく方がリアリティは遠ざかっていくので、“ファッションアイテムである” ところは意識しているけど、その前にやっぱり "道具" であるべきで、その適正な価格でできるだけお客さんに品質の良いものを届けたいっていうところはありますね。
ciiron TOKYO×SPEAKEASY、お散歩バッグへのこだわり
ciiron 渡辺:
ciironとして、初のバックプロジェクトだったので、最初はSPEAKEASYのデザイナーチームにどうやって正確に要望を伝えていけばよいかがわからなくて、事務所に2回目に伺ったときはとにかくいろんなバックを持っていって、「このバックのここがいい」「このバックのこういう形状にはなりたくない」みたいなお話をさせていただきましたね。(笑)
桑畑:
バッグに欲しい機能とか、使い方に関してかなり明確で、最初僕らの中で「だったらこの形をベースに考えた方がいいよね」っていう絞り込みがすごくしやすかっですね。
ciiron 渡辺:
私は、中でも可動式の仕切りが凄く気に入っています。
小林:
ここもciironさんに、“バッグの中でボトルが自立するようにしたい”だったり、“片手でリードを持っているのでもう片方の手で、とにかくサッとボトルを取り出せるようにしたい”など、犬の散歩中の使用シーンや要望をかなり詳しく言ってもらっていたので捻り出せたディテールかなと思ってます。
仕切りをしっかりつけてしまえばボトルはもちろん倒れないですけどciironさんとの会話の中で「お散歩以外での普段使いもしたい」というところも共有していたので、何か今まで出てきたアイディアの中に応用できることは無いかなと模索しました。それも、お金をかけた大げさな仕掛けではなく、ちょっとしたアイディアで出来ないかな、と。そこで、ホックを固定する箇所を変えることで可動する仕切りのアイディアが生まれました。ciironさんの粘りと僕達の経験値がうまくマッチして出来た、僕自身もお気に入りの仕様です。
桑畑:
僕は、この仕切りにポケットがついているのが秀逸だと思っています。仕切り自体がちゃんと機能するって割とありそうで無いというか。このバッグの仕様として上を絞らなきゃいけないので、そこまで芯のある仕切りは入れられない、などの色々な制約がある中で、仕切り自体にちゃんと機能があるのがすごく良いなと思っています。
ciiron 渡辺:
今回採用している生地も、“リッチ”という厚手のナイロン生地で、やはり生地見本で見たときよりも、バッグになるとさらに高級感があってとても好きな質感でした。
小林:
お散歩バッグとしてだけではなく、普段使いもしたいということであまりカジュアルになり過ぎないように艶感に品のある生地を使っているのですけど、品があるとはいえ、お散歩となると多少ハードな使用も想定して、66ナイロンで織られた強度のある生地を選択しています。
また、お散歩中はうんち袋を持ち歩くことも前提としてあるので、バッグ全体の内装の生地には、抗菌剤を糸の段階で練り込み、さらに強力な悪臭脱臭をするデオドラント加工を施した特殊な生地を採用しています。抗菌防臭機能の効果は、半永久的に持続するというお散歩バックに最適な素材です。
ciiron 渡辺:
うんちバッグにファスナーがついていて、完全に密閉できる感じも好きです。お散歩中、匂いが漏れないことは、結構大事なところだったりします。お散歩の後、そのままカフェに行ったりもしたいですからね。
小林:
打ち合わせ中、「できるだけ密閉したいです」っていうお話もあったので、ファスナーで極力密閉できるようなポーチを付属させています。こちらもインナーは同じく消臭効果素材となっていて、バック自体ともナスカンで脱着が可能なので、内側や外側のDリングに付け替えて使っていただけます。こちら単体であれば、ネットに入れて洗濯機で洗うことも可能です。外装には使用頻度の高いスマートフォンのポケットもあり、本当にお散歩バッグとしてだけではなく、普段のお出かけにも使っていただけると感じています。
左)付属の防臭ポーチ 右)バッグ背面にはスマートフォンが入るポケット。上部のテープの背面を折り返して凹凸を作ることで、前方のテープの長さを均一に保つ。
ciiron TOKYOとSPEAKEASYがこだわり抜いて完成させた、ブランド初のお散歩バッグ。SPEAKEASYの「道具として機能的である」という信念が細部にまで感じられる、美しいバッグが完成しました。インタビュー後の雑談で、1つだけ気になっていたことを聞いてみました。
「バッグの背面のテープが1回折り返して縫製してあるのはなぜですか?」
小林さんいわく、「テープを絞って使うタイプのバッグは、どうしても使っていくとテープの長さがだんだんアンバランスになっていきますよね。背面で折り返して凹凸を作ることで、テープの中央が固定されて、バッグ表面のテープをいつも同じ長さに保てるんです」と。さりげなく計算された秀逸な設計に感心しつつ、このバッグを手に取った方に、桑畑さんの言っていた「あ。やっぱりこれは他に無いな」と感じていただけるようなプロダクトになったら嬉しく思います。
SPECIAL THANKS TO TAKUYA OHISHI
ciiron TOKYO x SPEAKEASY SHOULDER BAG
ciiron TOKYO初となるお散歩バッグ登場。SPEAKEASYとのコラボレーションで実現しました。シンプルながらも強度ある厚手のナイロン生地を使用した、美しいフォルムで高級感のある仕上がりとなっています。